東京高等裁判所 昭和41年(う)2055号 判決 1966年12月28日
主文
原判決中、原判示第一ないし第五の罪に関する部分を破棄する。
原判示第一ないし第五の罪について、被告人を懲役三年六月に処する。
原判決中その余の部分に関する本件控訴を棄却する。
<前略> ところで、本件控訴は、原審が一個の判決手続によつてなされた有罪判決に対し、その全部について控訴を申し立てたものではあるが、被告人には原判示確定裁判を経た罪があり、原判示第一ないし第五の罪はこれと併合罪の関係にあるものとして一個の刑をもつて処断され、原判示第六の罪は右確定裁判後の犯行にかかり、その他の前示各罪とは併合罪の関係にはないものとして別個の刑をもつて処断されているのであるから、両者は、それぞれ、各別に独立して控訴の対象となりうべきものである(刑事控訴法第三五七条前段)。したがって、本件控訴は、本来二個の控訴申立が一個の申立手続により競合して潜在するものと解される。さすれば、右二個の控訴については、その理由の存否についてそれぞれ判断をなすべきは当然であり、その結論を同じくする場合は格別、一についてその理由あり、一についてその理由なしとする場合には、主文において各別に控訴理由の存否を明確にするを要するものと解するのが相当である。
よつて、本件控訴のうち、原判示第六に関する部分はその理由が無いから刑事訴訟法第三九六条にこれを棄却し、原判示その余の罪に関する部分は、その理由があるから、同法第三九七条第一項により、原判決中原判示第一ないし第五に関する部分を破棄し、同法第四〇〇条但書により、当裁判所において直ちに判決することとする。<後略>(江碕太郎 石田一郎 金隆史)